西の方では、十月に入ってやっと秋めいた風や気候になって来たと、
関西在住のお友達からメールで伝えられ。
運動にかかわってない人でも、
まだまだ長袖でなんて暑くていられないほどだと聞いて。
北海道とか沖縄とか、そこまで離れている訳でもなくたって、
そこまでの差が出ていようとはと、ひゃあとビックリしたのが、
まだ九月の末だった、先週のお話。
こちら、東京では随分と早くから涼風も吹いての、
短かった夏を尚のこと早じまいしましたと言いたげに、
急ぎ足で秋がやって来ていたのにね。
キンモクセイの匂いだって先週のうちに匂ってたよね…と、
モン太や鈴音、まもりお姉ちゃんと話題にしていた。
ああ、そんなことを一番最初にふわふわと思い出したのは、
どこからかそのキンモクセイの甘い匂いがして来たからだ。
庭の生け垣に1株だけあるのから、お母さんが1枝とって、
玄関やリビングへって飾っていたからだろな。
お母さんが留守の間は、
小花が落ちるのちゃんと掃除しときなさいよって、
そんな風に言い置いてのお泊まり残業。
週末に両親がいないのもいつものことで、家の中は静かなものだし。
そこが違うってくらいで、目覚め自体は日頃と変わりなかった。
強いて言えば、何か重堅いものが腕に乗っかってるくらいかな?
寝てる間に何かが落ちて来たんだろうか。
立て掛けてあったものとかあったかな?
今の今まで気づかずに寝ていたくらいなんだから、
出しっ放しになってた掃除機のホースとかモップの柄とか、
大したものじゃあないんだろけど。
“………………。”
じわじわなような、スルスルとなような、
周囲が少しずつ掴めてきて。
布団の中、ずっといるにはさすがに暑いかな?
でも、外へと出ている鼻の頭なんかは、ちょびっと涼しい。
窓、閉めた筈なのに、もうさすがに秋だもんな。
うっかりしてると風邪ひいちゃうから、気をつけないとな。
“…………………………。”
昨日って試合あったよね。
少しだるいし、あれ? でも…あれ?
何でだろ、記憶が曖昧。
さすがに手ごわい相手だったんで、
怪我しかかったメンバーも何人かいて。
勝てて当然なんていつだって思っちゃいないけど、
それでも“この秋もまた油断なんて出来ないね”って、
レギュラー陣であらためて気を引きしめ合って。
凄っごく疲れてて、それでも帰らなきゃって…
「……………………え?」
自然な流れ、朝だもの起きなきゃと、目を開けたその途端、
目の前に誰かのお顔の一部があった。
正確には…掛け布団の下に別な布団の膨らみが
あるように見えたその上の方に、
誰かの顎の先が見えていて。
何だこれと視線を上げたら、精悍な男の人のお顔が。
誰かがこうまで間近に居ようなんて、
想いも拠らなくての、一瞬ドキィッと胸底が跳ね上がりかけたけれど。
「……………………あ。////////」
この寝姿、間近になってる懐ろや首元とかには重々と見覚えがあった。
あ、そかそか。////////
そうだった、進さんのホワイトナイツも同じ会場での試合があって、
こちらのゲームが終わるまで、
偵察かたがた観客席から観ててくれたそうで。
夕食がてらのラーメン屋さんに寄り道してから、
ちょっぴり重い足取りで辿り着いた最寄り駅の前で。
いつものジョギングスタイルでいた進さんと、
ばったり逢ったのまでは何とか覚えているのだけれど。
“その辺りから記憶が曖昧なんですけれど…。”
ボクがあまりにくったり疲れていたのでと、
見かねて送ってくれたんだっけ。
帰り着いても家に誰もいないんだって思い出したんで、
尚のこと、脱力してたボクだったのを、心配してくれたのだろな。
試合が終わると全部のスイッチがバタバタッと切れちゃうなんて
随分と久し振りのこと。
新興チームには違いなかったけれど、
そこまで油断してたんだってこと、こんな形でも思い知らされちゃった。
……いや、それよりも。
何で進さんまで一緒に寝てるんだろ?
駅前辺りからの記憶がないから、
もしかしておぶるなり担ぐなりして家まで送って下さったんだろか。
それから…
“もしかして戸締まりで悩まれたのかなぁ?”
運び込むまではボクが寝ていても支障なかったけれど、
このまま帰っては誰もいないのに不用心だとか、
でも、玄関へ鍵をかけちゃったら、その鍵はどうしたらいいのかなとか。
“いや、そういうおろおろした考え方はボクに向いてるんであって…。”
あ・そっか。////////
おろおろすることもなくの即決で、
此処で一緒に居てくれた、と……?/////////
“ありゃりゃあ……。///////”
どっちかと言うと、
同じ布団に入って寝てたなんてな一大事、
まるきり気づかぬまんま、すっかり熟睡し切っていた自分に、
“わあぁあ。////////”
これって物慣れたってこと?と、
自分の大胆不敵なところへ あらためてドギマギしている順不同さよ。
でもって、
あらためて そおっと見遣った大好きなお人の寝顔へと、
“ふわぁあぁ〜〜〜〜〜。/////////”
慣れ切って…はないところが、
そんな風に驚きを誘ったのだという順番だってことには、
まだまだ気づいてないところが、
初心というか何というのか……。
“…やっぱりカッコいいなぁ。/////////”
いくら日頃は隙のない進であれ、
今はさすがにぐっすりと眠っているのだ、
その意識も眠りの底へと沈み込み、無心なお顔な筈だのに。
男らしい造作に滲む男臭さや精悍さは、
そもそもの素地なのかしらね。
卒がないよりちょっぴり朴訥なところが、
いっそのこと彼にはらしいと映るほど、
凛々しくて雄々しくて、逞しくて頼もしくて。
……でも。
“カッコいいだけなら、ドキドキまではしないと思うんだよね。”
例えば 桜庭さんは、さすがはアイドルでカッコいい二枚目さんだと思うし。
ウチだと 十文字くんも、
精悍さでは群を抜いてて、女の子たちも放っとかない。
でもね、カッコいいと思う止まりで、ドキドキはしない。
武蔵さんみたいに男臭い大人ってカッコいいなと、
ほわんと憧れることはあっても、
素敵だなとか、うらやましいなと思うところまでで、
“どうして こんな…。/////”
進さんが相手だと、どうしてこんな。
カッコいなと思うと同時に、ドキドキしちゃうんだろ。//////
凛々しさとか男臭さとかだとへ気づくより前に、
頬っぺが熱くなるし、
なのに、あのね? 視線が外せない。
“進さん、だから、なのかな?”
愛しい人だから、大好きな進さんだから?
「……………………あ、ああの、あの、
おはようございます。/////////」
〜Fine〜 09.10.09.
*ネット復帰第一弾が、
こんなふにゃけたモノローグものでいいんかいという、
相変わらずな奴でございます。(苦笑)
お家までを送って来て、そのまま迷いなくセナくんと添い寝をしてしまう、
何とも困った騎士さんですが、
添い寝自体には慌てふためかないセナくんにも問題は大有りなような…。
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